基礎から学ぶ日経225について

銀行は、どちらに転んでも、抜き取った手数料の分だけ確実に儲けることになります。
中途解約時の悲劇さて、広告の中央には、「この定期預金は、満期日までの7年間(期間延長の場合には10年間)原則として中途解約できません」とあり、実際に、たいていのケースでは中途解約に応じてくれないでしょう。 ただし、どうしても中途解約せざるをえないケースであれば、中途解約に応じてくれそうです。
広告の一番下に「特別な事情があると当行が認めて中途解約に応じる場合」の注意書きがあるからです。 その続きを読むと、「解約によって発生する費用(解約日から満期日までの本預金の再構築額と手続き費用)を計算して元本金額から差し引きますので、このとき、元本割れが生じる可能性があります」と書かれています。
では、Aのケースで、1000万円を預けた人が3年後に解約しようとすると、実際にいくらの費用を差し引かれるのでしょうか。 本当は細かな条件を設定しての計算が必要なのですが、かなり大まかに説明しましょう。
ポイントは「中途解約によって生じる再構築額を差し引く」といった記述にあります。 これをくだけた口調でわかりやすく言えば、銀行は預金者に対して「あんた(預金者)は将来の金利動向に関する賭けをした結果、現時点で約400万円の負けが予想される状況になっていて、それなのにいますぐ賭けを降りるというのなら、予想される負け分の約400万円をいますぐ支払ってもらうよ」と要求しているのです。

満期時の400万円と3年後の時点の400万円とでは価値が異なりますから、その差を調整して、もう少し少ない費用ですむかもしれません。 ただし、再構築額は計算の前提条件によって増減します。
その計算は銀行がおこなうのですから、400万円より高く見積もる可能性も十分にあります。 さらに、再構築額とは別に、中途解約手続きの事務的な費用も差し引かれます。
銀行が冷酷に対応すれば、結果として、このケースでは元本の4〜5割程度の費用が差し引かれるでしょう。 元本保証を信じて1000万円を預けたのに、中途解約すると500?600万円程度しか戻ってこないこともあるということです。
なお、預けていた3年間の金利についての記述はありませんが、銀行側の規定によっては、3年間についての適用金利がほぼゼロである可能性があります。 もし税引後年1.6%の金利が3年間だけ適用してもらえるとしても、元利合計金額は1048万円です。
他方、物価は3年間合計で10%上昇していますから、費用を一切引かれないとしても、すでに実質的な価値は預け入れ時点より低いのです。 それなのに、さらに多額の費用が差し引かれるのですから、踏んだり蹴ったりです。
一般的な定期預金では、銀行側は、預金者の中途解約に伴う損失を押しつけられる可能性があったのに対し、この商品では、オプション取引を組み込み、その「再構築額」という考え方をもち込むことで、損失を中途解約者に負担させることができます。 ある意味で、くどいようですが、この預金は本当に恐ろしい金融商品です。
たとえば、親が幼い子供の将来の教育資金にと、親の名義でこの預金に預けたとしましょう。 しばらくして予想外のインフレが生じ、預金の価値がどんどん目減りし、そのままだとさらに目減りしそうなときに、親が死亡して、中途解約することになったとします。
あるいは、突然の病気や事故などで急におカネが必要になった人が中途解約を認められたとします。 そういった場合でも、すでにインフレで実質的に目減りし始めている元本から、さらに何割かを差し引いた金額しか払い戻さないという処理を、銀行側は本当に実行するのでしょうか。

まあ、いくら社会的に非難を浴びようとも、それぐらいのことは平気でやりそうだという銀行でないと、そもそもこんな商品を販売したりしないのでしょうね。 あとは読者のご想像にお任せします。
工夫された商品だと言えます。 以上のように考えると、銀行の直接的な利益だけをみれば、じつは、この預金の中途解約を銀行側が嫌う理由はありません。
客側からすれば、この預金に一度預けたあとどんな状況になっても、中途解約する方が、満期まで預け続けるよりもずっと損になると覚悟しておく必要があります。 もちろん、たくさんの人が予想しているように、今後しばらくは低いインフレ率ですむ可能性は高く、そうなれば低金利が続くでしょうから、この商品に預けることで結果として得をする確率はそれなりに高そうです。
しかし、うまくいっても、7年合計で元本に対して約1割の税引後利息がつくだけです(2%×7×0.8U11.2%)。 悪い結果に転んだ場合には、10年かけて元本の大部分を実質的に失うかもしれないのです。
とても不利なギャンブルです。 さて、このタイプの預金は、銀行に安定的に利益をもたらすでしょう。
それを狙って外資系の銀行がこういった商品を積極的に開発し、「先進の金融テクノロジーをもつ当行だから開発できました」といった宣伝をするのに対し、邦銀(メガバンクなど)は、もちろんそれに追随するケースもありますが、類似の商品を提供しないこともよくあります。 このとき、学者や金融関係者の中には、「日本の多くの金融機関が金融テクノロジー(金融工学)の面で遅れているから、先進的な金融商品(オプション取引を応用した商品など)を提供できないのだ」といったコメントをする人がいます。
本当に困った人たちです。 残念なことに、自分の研究が何か立派なものであるとミエを張りたいがために、あるいは、どこからか研究費をふんだくるために、実際には、ぼったくり商品の開発に応用されることが多かったりする研究分野を、社会的に過大評価させようとする学者(研究者)はどこにでもいるのです。
この程度の商品なら、技術的には、ほとんどの銀行がマネできるでしょう。 しかし、これほど危険な仕組みをもちながら、一見すると危険性がないようにみえる商品を堂々と宣伝し、もし客が大損しそうになって中途解約するとしても、客の目の前で平然と多額の再構築額を差し引いてみせるには、銀行側もよほどの覚悟が必要です。
それで評判を落とせば、良質な顧客を大量に失うかもしれないからです。 それが怖いから、他の銀行は出したりしないだけなのです。
決して、金融テクノロジーの差などではありません。 たいていの銀行では、知識のないカモを騙してぼったぐることに祷曙はありません。

しかし、この商品のように、ある程度知識のある上客まで引っかかる危険性がある預金となると、長期的な利益につながらないと判断する銀行が多いのではないかと、筆者は考えています。 金融商品広告の中だけでなく、新聞や雑誌の記事などにもよく出てくる言葉ですが、意外にも、正しい意味で使われていることは少なく、まちがった意味で使われていることの方が多いのです。
現実的ではありませんが、簡単な数値例を考えています。 ある資産に100万円を投資すると、1年後に「成功」と「失敗」の2つの結果のどちらかが実現します。
成功のケースでは、資産は50万円増えて150万円になります。 失敗のケースでは30万円減って70万円になります。

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